【赤この】0921

・年齢操作(22×23)
・木葉は薬学部に行っててほしいとか料理上手だろうとかの願望強め
【赤この】0904【赤この】0911と同じ世界線

 仕事終わり、スマホを確認すればすでに家に着いていると連絡が入っていた。まあ、早く切り上げられたとはいえ定時を少し過ぎての退勤になった俺が、大学生の帰宅時間にかなうわけがない。今日はサークルもないと言っていたし、そういったことを気にするのも、数ヶ月前にやめた。
 六年制大学に通う木葉さんは、普通の四年制大学に通って就職した俺よりも学生期間が長いから、俺のほうが先に社会に出ていることがなんとなく、変な感じがしている。それは未だに。俺はオフィスカジュアルに身を包んで出社するが、木葉さんは朝少しのんびりして学校へ行くんだ。ただ、朝起きるのは木葉さんのほうが早くて、俺が起きる頃には朝食ができている状態。
 ずっと実家から学校に通っていた俺は、俺が就職を期に実家を出ることにした。そして、その住まいに木葉さんを誘った。恋人同士だから同棲なのだが、頑なに同居と言い張る可愛い恋人に倣って、俺も同居と言っている。周囲の先輩たちはぜんぜん、どっちだろうと気にしてないけど。
 二人で住まう家は、奮発してそれぞれの個室と共用リビングがある2LDKの部屋を借りた。就職先が出版社で、前情報から残業が多いと聞いていたためだ。六年目の大切な年に、生活環境での不利益を与えるのは同居を提案するにあたって、プレゼン力に欠けると思ったから。だけどその話をしたら、木葉さんは笑って「そんなに熱弁しなくても、来年には一緒に暮らそうって言おうと思ってたけどな」と言ってくれた。年上の余裕のようなものが見えて、少しだけ悔しかったことは木葉さんには話していない。
「ただいま帰りました」
「おかえりー」
 カレーのいい匂いがする。玄関で靴を脱いで、ササッとリビングへ。リビングのローテーブルには木葉さんの参考書が置いてあって、おそらく煮込みの間に目を通していたんだろう。薬剤師資格を取ることは目的ではないと言っていたが、それでも全力を出すところに好感が持てる。
 リビングで鞄と上着を置いて、洗面所で手を洗う。それから自室に戻ってちゃっちゃと部屋着に着替えた。早く木葉さんの傍に行きたかったから。
「美味しそうな匂いですね」
「だろー? なんか大学そばの業スーで、新しいスパイス見つけたんだよ」
「それをきちんと活用できる木葉さんはすごいですね」
 自分があまり料理上手ではないから、器用に料理を作ってしまう木葉さんは尊敬するしかなかった。三食カップラーメン、まではいかなくても三食白米と焼き海苔はあり得る。たまにふりかけをかける程度の。作りたくないとかはないけど、作れる気がしないからだ。
「だって赤葦に美味しいもん食ってほしいし」
 なんでもないことのように言う彼が、ずるいなあと思った。
「いつだって美味しいですよ」
 料理中に抱きしめるのはだめだと言われているので、できないのが悔しい。腕を上げては下げてを繰り返す挙動不審な俺を見て、木葉さんは笑って「もう少し待って」と言ってくれた。
 もう少し。待てるかな。そんなことを思いながらソワソワしてたら、木葉さんにまた、笑われた。

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