【HQmc】1012
シリーズ: HQmc 第3話
・某四角いサンドボックスゲームパラレル。サバイバル・ノーマル。
・少々ゲームシステムの改変あり。バージョンはご都合。
・キャラたくさん出したい
・原作時間軸は春高終わりの冬がいいかなと思う
・現在のメンバー:二口、滑津、花巻
「烏野の、10番……?」
視線の先にいるのは見たことのあるオレンジ頭。おかしな速攻を仕掛けてくるコンビの片割れだ。インターハイ予選にて敗北を喫した相手だが、二口の相方である青根がいたく気に入っていた記憶がある。相方がいないことも不安な中、簡単に言えば扱いづらそうな人間に出会ってしまった。そばには見たことのない金髪の人間と、見たことのあるでかいぱっつん前髪の男がいる。滑津や花巻がいれば案外なんとかなるだろうか。
「あっ!」
おそらく、二人はまだ気づいていなかっただろう。なにせそちらに背を向けているから。こちらに気がついたのはオレンジ頭で、金髪の腕を掴んで引いて、こちらに駆け寄ってきた。
「伊達工の! 二口さん!」
ア、覚えてんだ。実直素直なプレースタイルからちょっと頭弱そうだなという、失礼な印象を抱いていたことを今この瞬間撤回した。バレーの試合で相対しただけの人間のことを覚えていられるのだから、少なくとも記憶力はあるし考えなしでもない。ただ、スタミナ切れを起こしていそうな金髪の状況を考えてやれてない点には、頭を抱えざるをえないが。
「日向くんじゃない、烏野の」
「ああ、あの影山くんの相方」
滑津はマネージャーらしく対戦相手の情報に詳しい。花巻はおそらくチームメイトである及川の影響だろう。彼の言う影山くん、は、及川の後輩だと聞いた。彼が毛嫌いする人間のひとりだとも。
日向のいる烏野は、宮城の強豪である花巻の青城を下して宮城県予選決勝へ行き、そしてあの、でかいぱっつん前髪の男がいる王者・白鳥沢を倒して全国の舞台に立った新たな強豪だ。落ちた烏と呼ばれていることは知っているが落ちる前を知らないので、二口にとってはただ、倒すべき相手であることに変わりはない。
「そっちは五色くんだね」
「あ、はい。お疲れさまです……?」
紫のジャージを着た、でかい図体を少しだけ縮こまらせて彼がこちらを伺う。きちんと背筋を伸ばせば同じくらいの身長だろうか。彼も一年なので、倒すべき相手だ。とはいえ、ここから帰らなければなんの意味もない。二口は小さく息を吐いた。他の学校の人間がこの世界にいる以上、今はそのことを忘れたほうがいいのだと。
「そっちのは? そのジャージ、東京の音駒だろ……?」
知り合いはすぐに互いの本人確認がし合えるので良いが、こうして知らない人間がいるとなると今後の邂逅にも緊張感が増す。自分たちも含め全員部活ジャージを着ているので学校名はわかるが、危険人物だったらと考えてしまう。自分や花巻は多少怪我をしてもいいから、滑津は守らなければならないだろうなと。ただ、走り終わったにもかかわらずいつまでも肩で息をしている男が自分たちの脅威になるとは到底思えなかった。
「あ、はい、研磨です!」
「けんま?」
「みなさん春高見てました? 孤爪研磨さんです、セッターの」
端的に名前だけ口にした日向をサポートするように、五色が追加情報をくれた。ああなるほど。音駒は春高で烏野と熱戦を繰り広げた東京代表だ。二口も見たことのある人物であることをようやく認識した。三人の姿を見つけてから孤爪を正面から顔を見ていなかったし、ジャージだけでは彼だという確信は持てなかったのだ。それに、確かに中継で見た孤爪は後半にバテている様子を見せていたが、あれだけの試合をした選手がちょっと走ったくらいでこんなに息を切らすなんて思わなかったのもある。
「あー……、まあじゃあ孤爪くんは一旦置いとくとして、みんなは今の状況のこと、なにか知ってる?」
滑津がうまく話の進行方向を変えてくれたから、それに乗るように花巻が「ここに来る前のこととか、来てからのこととか……」と付け足した。二口自身は気づいたら、だったので。ただ、帰宅途中だった気がする。
問われた五色も日向も、首を横に振る。聞こえていたのか、俯いたままの孤爪も首を横に振り、そういえば聞いていないなと思い滑津と花巻のほうを見たが、二人も同じように首を振る。皆、同じように突然ここに降り立ったということだ。
「声が、」
「……研磨?」
かすれた、まだ息の整っていない声。日向に体を預けたままゆっくりと顔を上げた孤爪が、二口たち三人を見た。
「悪しき存在を、ウィザーを倒せって」