【HQspmk】0925

シリーズ: HQspmk 第2話

・某スパマケシミュパロです。(スパマケ以外もあります)
・出てくるキャラは常に趣味と捏造でできています。いっぱい出したい。
・スパマケの設定をリアル寄り+都合よく改変しています。(開店時間とか…)
・2話目。前回→【HQspmk】0910

 夜はかき入れ時だ。朝に荷物を運んでくれたジョーゼンジ運送やオウギワクナン倉庫の社員、隣のホテルや裏のクリーニング屋、信号ふたつ離れた先にある業務用スーパーなど、仕事帰りの疲れた体は出来合いのものを求めてしまうから。
 このスーパーマーケットは朝十時から夜九時の営業、その前後二時間を準備時間としている。店長の木下が早番、副店長の花巻が遅番に入り、レジ打ちや品出しを行う。短時間の学生バイトも雇っており、概ね順調な店舗経営ができている。
 セールをすることは稀だが、システムに反映される市場価格によって日々売価を変更していることにより、住民は遠出をすることなくそれなりの価格で商品を仕入れることができる。確かに品揃えは複合施設のショッピングセンターよりも薄いが、平日にふらりと立ち寄る程度ならばちょうどいいのだ。
「翔陽」
 従業員の一人である日向は、土日は早番七時間勤務、平日は遅番の四時間勤務でシフトを入れている大学生だ。バレーボールのサークルに所属しているため週三、四日の勤務ではあるが、品出しはトレーニング代わりにちょうどよかった。
「あ、研磨!」
 そんな日向が、商品を入れていた段ボール箱を捨てるタイミングで名を呼んだのは、毛先がブロンドの青年だった。日向も彼を名で呼ぶ。彼は、隣のホテルで働くひとつ上の友人だ。
「そろそろ上がり?」
「おう! 裏で待ってる?」
「うん」
 日向は研磨をバックヤードへ招き入れ、休憩用の椅子へ座るよう促した。ついで、というかそちらがメインだが、品出しするための荷物を抱えて店内へと戻る。
「日向、また孤爪さん待ってくれてんの?」
 棚に向かい、箱から商品を取り出して陳列していたら、今度は遅番シフトで顔を合わせる国見が声をかけてきた。普段は最低限のやり取りしかしない相手からの話題振りに、思わず返事をする声が上ずってしまう。
「なにその声」
「だっ、て……国見が話しかけてくんの珍しいし」
「知ってるか日向、こいつレジで喉消費するから他の会話で喉使わないようにしてるんだぜ」
 そう教えてくれたのは、同じく遅番シフトをともにする金田一だ。彼と国見は同じ大学に通っており、シフトも同じように入れている。休日は遅番で長めだ。副店長の花巻から「国見は省エネだから」と聞いてはいたものの、そこまで省エネしているとは思っていなかったので、つい笑ってしまった。それに、国見は閉店間際の客が少なくなったあたりから品出しに回る。代わりに花巻や他の遅番がレジに入るのだ。それも省エネの一環なのだろう。
「で、なんだっけ、研磨だっけ?」
「そうだよ。孤爪さん、この間新作買ったって言ってたから感想聞こうと思って」
 待っているかの問いは、雑談をする時間があるか、というニュアンスを含んだものだったようだ。日向は「このあと俺んちで晩飯食うけど来る?」と彼を誘った。どうやらゲームの話題で会話が弾むらしい二人なので、仕事終わりの立ち話より腰を落ち着けたほうがいいだろうと思ったからだ。
「飯なに?」
「決めてない。なんか適当に作るよ」
「じゃあ金田一に作らせよう」
「は!? 俺!?」
 人もまばらな店内に、閉店のメロディが流れ始める。日向は空になった段ボール箱を持ってバックヤードへ向かった。そして休憩椅子で携帯ゲームをする研磨に対し、「今日の晩飯作ってもらえるって」と声をかけた。研磨は、一瞬日向に視線を向けたが、すぐゲーム画面に戻ってしまう。
 それでも、日向は別にかまわなかった。皆がやりたいように生きる街、それが日向の生きる、この街なのだから。

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